血液濾過透析もある
透析療法には、他にオンラインHDF療法、腹膜透析療法があります。
オンラインHDF(血液濾過透析)とは、血液透析と、血液濾過を合わせた治療法で、透析膜を高性能のものにすることで、
多くの老廃物の濾過が可能な治療法です。HDFはオフライン方式、オンライン方式に分かれており、
オンラインHDFの方が、血液を濾過する補充液が多く、より多くの老廃物の除去が可能です。
利点として、通常透析では取り除けない老廃物の除去が可能で、合併症の予防につながることです。
補充液を注入しながらの治療のため、循環血液量が減少せず血圧が安定します。血圧の低い人にも有効です。
補充液の清浄化のための設備と徹底した水質管理が必要であるため、一般的な血液透析よりコストがかかる面があり、実施している病院が少ない治療法です。
腹膜透析は、自宅で行う透析のため、通学や通勤に支障無く今までどおりの生活が可能であることが利点です。異常が無ければ、通院は月に1-2回程度です。
お腹の腹膜にカテーテルというチューブを埋め込む手術を行い、自分の体内にある腹膜を通して、血液中の不要な老廃物や水分を取り除きます。
寝ている間に機械を使って行う方法(APD)と、一日に数回自分で透析液バックを交換する方法(CAPD)があります。血液透析に比べ、
残っている腎機能を長く保たせることができると言われています。ただし、平均5年ほどで腹膜の働きが悪くなり、血液透析へ移行する人が多くなっています
人工透析は健康保険対象の治療法です。
週3回の人工透析を受けると1ヶ月で治療費は約50万円ですが、国民健康保険、社会保険では、本人、家族とも3割負担で治療を受けることができ、自己負担は約15万円となります。
ただし、特定疾病療養制度を使うと、1ヶ月の自己負担は医療機関ごとに1万円(収入によっては2万円)となります。
特定疾病には血友病、透析を受けている腎不全、後天性免疫不全症候群があります。
まずは「特定疾病療養受領証」を交付してもらう必要があるので、申請書と医師の診断書などのその疾患にかかったことを証明する書類を協会けんぽに提出します。
同じ月内に申請すれば、その月の初日からこの
慢性腎不全で人工透析を受けている場合は、障害年金2級以上に該当します。受給要件を満たせば、認定され、障害年金を受給できます。
検査の値や日常生活状況によって認定されます。
公務員やサラリーマンの場合は、障害基礎年金2級に加え障害厚生年金2級となり、子どもや配偶者の加算を受けることもできます。
他にも医療費助成を受けることができる場合もあるため、病院のソーシャルワーカーに相談してみましょう
腎不全には、急性腎不全と慢性腎不全の2種類があります。急性腎不全は、早期の治療で腎機能の回復が見込めますが、慢性腎不全は時間をかけて腎機能が低下し、自覚症状が少ないため、進行して発見されることが多く、腎機能の回復が難しくなります。
腎不全の原因となるのは、腎臓病です。慢性糸球体腎炎、腎硬化症(高血圧による障害)嚢胞腎などがあります。
腎不全の症状は、原因や重症度により様々ですが、尿の異常や高血圧、むくみなどがあります。
慢性腎不全の末期には、尿毒症となり、全身けいれんなどの症状が見られます
糖尿病性腎症は、糖尿病の合併症の一つです。これが悪化すると腎不全となり、人工透析を受ける原因となります。
糖尿病により高血糖が続くと、血管の内側にある内皮細胞が障害され、老廃物を十分に除去できない状態になります。そのため、たんぱく質が尿内に漏れ出てきます。
進行するまで自覚症状が少なく、むくみや息切れ、胸苦しさが出てくるとかなり進行してしまっています。尿検査で早期に発見し、治療を開始することが大切です。
人工透析を開始後の平均余命は、健康な一般人のおよそ半分といわれています。透析を始めると、2-4倍の速度で年をとるともいわれます。つまり50歳で透析を始めると、
健康な人の余命が30年とすると、透析をしている人は15年ということになります。
人工透析の導入年齢は平均、67.8歳です。多くが高齢になってから人工透析を受け始めるということです。
10年生存率、20年生存率は共に10~20%前後です。
若くして人工透析を受け始めても、20年、30年と普通に生活している人もいます。昭和50年代から一般に普及した人工透析ですが、現在最長で40年以上治療を受け続けている人がいます。
水分制限、食事療法などできちんと体調管理をすることにより、有意に余命が長くなるという研究結果もあります
工透析を受ける原因となる疾患が重症であったり、人工透析をはじめるのが遅すぎたりした場合は生存率は当然低くなります。
例えば、人工透析を受け始めて1年以内の生存率は89%であり、十数%は1年以内に亡くなってしまっています。これは、原因となる腎不全が進行してしまっていたり、重症であった場合であると考えられます。人工透析患者の死因の一位は心不全です。
人工透析を受けている場合は、体重コントロールがうまくいかず、余分な水分が体内に残っていると、心臓への負担が増大します。
また,高血圧が続いていると、心臓への負担が高く心肥大となります。
リンやカルシウムが排泄が不十分で、体内に蓄積していると、心臓の筋肉の動きが悪くなり、心臓の弁の石灰化が起き、心膜症から心不全に至ります。
糖尿病などで動脈硬化が進行している場合も虚血性心疾患の危険因子となります。
このように様々な原因で人工透析患者は心不全を起こしやすい状態なのです。予防として、体重と食事の管理が大切です。
工透析を受けていると、栄養状態の低下、白血球機能の低下、抵抗力の低下などの理由から、感染症にかかりやすい状態となっています。
なりやすい感染症として、尿路感染症、皮膚感染症、気道感染症、消化管感染症、シャント部の感染症があります。
予防として、うがいや手洗い、清潔の保持、栄養バランスのとれた食事が大切です。また、インフルエンザや肺炎球菌のワクチンを受けておきましょう
般人の死因で第一位である悪性腫瘍ですが、透析の原因疾患である腎疾患はがんの発生リスクを高めるという研究結果があります。
男性の場合、特に多いのが腎臓がんで、一般人の4倍と言われます。次いで多発性骨髄腫です。女性は子宮がんが、一般人の2倍のリスクがあるといわれます。
透析をしていると、血液検査を定期的に行っており、早期にがんが発見できることもあります。しかし、腎臓がんは透析をはじめて数年が経過してから、
腎臓内に嚢胞ができがん化することがあることから、毎年のがんの検査は必要です
脳血管障害の原因となるのが、高血圧と動脈硬化です。透析を受けていると動脈硬化の進みが早いともいわれています。
高血圧の改善が大切であり、透析患者の場合は余分な水の貯留を極力少なくすることが最も重要です。 降圧剤の内服も時には必要となります
体に入る水分量と出て行く水分量のバランスに注意しなければなりません。余分な水分は尿として排泄されますが、尿量が少ない場合は体の中に余分な水分がたまってしまいます。
これがむくみとなります。腎不全が徐々に進行し、むくみや尿量の減少が見られてくると、一日の水分量を制限しなければならなくなります。
尿が出ないのに水分をとってしまうと、体内に水分が余る状態となってしまいます。
塩分をとるとどうしても体は水分を欲します。基本的には塩分制限が守られていれば、水分を制限する必要はないことがほとんどです。
腎臓の働きが低下すると、カリウムとリンの排泄が不十分となります。リンの過剰摂取は骨の合併症を引き起こす危険性があります。
たんぱく質の制限が守られていれば、ほぼリンも制限されます。
リンは骨の分解に関わるため、過剰摂取すると骨粗鬆症のリスクが高まります。
たんぱく質の多い食品は、肉や魚、卵や大豆製品、乳製品があります。乳製品は特にリンが多く含まれるため注意が必要です。カリウムの排泄が不十分となると、
高カリウム血症を起こす危険性が高くなります。嘔吐やしびれ感、不整脈などの症状があり、一定の量を超えると心停止の危険性もあります。
カリウムはキュウリなどの生野菜やバナナなどの果物、そして豆類に多く含まれています。カリウムは水分に流出しやすいので、制限する場合は茹でこぼすなど調理法が適しています。
析終了時の目標体重をドライウエィト(DW)と呼びます。これは血圧や心臓比、むくみの状態によって人によって違います。
透析の前後には必ず体重測定をし、必要な量を透析で除去します(除水)。除去する量が多くなると血圧が下がるなどのリスクが高まるため、
摂取する水分や塩分を制限する必要が出てきます。
このため、日々の体重の管理が大切です。
シャントは利き手ではない前腕部に作成することがほとんどです。シャントは皮膚の下にあり、外見上はほとんど変化はありませんが、
シャント部からの出血や閉塞には注意しなければなりません。シャント側の腕で腕枕をしたり、荷物を持ったりすることは禁忌で、血圧測定もしてはいけません適度な運動も大切です。
骨の弱化や筋力低下が骨折の原因となったり、
足の血行が悪くなることから閉塞性動脈硬化症などの病気になってしまうことがあります。透析の導入が高齢化していることもあり、
日常生活の制限から活動範囲が小さくなり、運動不足をきたしている場合が多くなっています。
長く仕事や好きなことを続けるためには、適度な運動で筋力、体力の維持が必要です。 そのため、透析治療中に軽い運動を行ったり、理学療法士が運動指導を行っている病院もあります。
工透析を受けている人の状況は様々ですが、食事や運動で体調を管理しながら、仕事や趣味を続けている人も大勢います。
人工透析によるいくつかの生活の制限はありますが、主治医や看護師と相談しながら、自分に合った治療を受けましょう。
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